[Book] 読書メーター2010年3月分まとめ

先月分のまとめです。
3月の読書メーター

読んだ本の数:22冊

読んだページ数:6191ページ



ヴァンパイヤー戦争〈6〉秘境アフリカの女王 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈6〉秘境アフリカの女王 (講談社文庫)

舞台はパリへ。そしてこの巻はサブタイトル通り、アフリカへの道筋が示される導入部でした。隠れ人気キャラ(たぶん)のムラキさんにスポットが当たっておりますよ。バイオレンスアクションというより、冒険物語みたいな趣に少し変わりました。恒例の解説も、少し毛色が変わって、ハリウッド映画や日本の冒険小説における「敵」の描き方の分析などでした。

読了日:03月02日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争〈7〉蛮族トゥトゥインガの逆襲 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈7〉蛮族トゥトゥインガの逆襲 (講談社文庫)

アフリカそして密林へと進みます。解説でも言及されてますが、一連のアフリカモノには底本があるらしく、話の流れはそれに沿っているようですね。そのせいか、これまでとはだいぶ毛色の違う、冒険譚のような仕上がりです。読みやすいけど、あまり笠井先生のどギツい作家性が発揮されていないのが残念ではある。今回の解説は、前述したように底本との比較が主。作品そのものにここまで言及されたのって、初めてではないだろうか。

読了日:03月03日 著者:笠井 潔,武内 崇



地球を斬る (角川文庫)地球を斬る (角川文庫)

国際政治コラム集。検証や解説も付いていて、基本的に読み応えはある。短い文章の中に、深い洞察が凝縮されていると思う。とはいえ、自分に馴染みの薄い、宗教的考察と情報官僚の経験に基づいた視点は、魅力的である一方、煙に巻かれているようでもある。物言いが硬派で客観的分析をしている印象を受けるが、実は鵜呑みにしてはいけないのではないか、という漠とした危機感が頭をよぎる。

読了日:03月04日 著者:佐藤 優



リヴァイアサン―終末を過ぎた獣 (講談社ノベルス)リヴァイアサン―終末を過ぎた獣 (講談社ノベルス)

大塚節炸裂。小説の「作法」をまず構築して、そのまな板の上で小説を「実践」する。今作はさしずめ「セカイ系」の実践講座でしょうか(最終話とか特にそんな感じなので)。絵柄については、マンガ版は衣谷遊でしたが、小説版は箸井地図に依頼したところも、彼のそうした「狙い」を感じる。それにしても、「犬彦」や「終わらない昭和」という、摩陀羅神話へのお決まりのリンクに相変わらずはしゃいでしまう私は、全く成長してないな(苦笑)。

読了日:03月04日 著者:大塚 英志



新日本探偵社報告書控 (集英社文庫)新日本探偵社報告書控 (集英社文庫)

読んでる途中で再読と気づいた罠。興信所を舞台に、その所員と調査報告書について淡々と記録していくだけの作品。心理描写がほとんどなく、筒井御大らしからぬ抑えっぷりですが、逆に文章の端々に、ピンと張り詰めた緊張感がある。報告書だけで事の顛末が語られるところとか、行方知れずになったり死んだりした所員に対して、周囲の心理が全く描かれないところも良い。読み手が行間を膨らませて楽しむ作品であると思います。

読了日:03月05日 著者:筒井 康隆



新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)

なぜかビジネス書界隈で取り上げられていた本。ゲリラは地域住民の支持を得よというのは、ドラッカー的な企業による社会への貢献と通じると言えなくもないか。ビジ書として読まれる意義は感じませんが、組織論としては規律と平等を重んじるという定番だが難しいことを説いており、また、ゲリラ戦術自体も読み応えがあるなど、面白かった。

読了日:03月07日 著者:チェ・ゲバラ



ヴァンパイヤー戦争〈8〉ブドゥールの黒人王国 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈8〉ブドゥールの黒人王国 (講談社文庫)

前半は大冒険アドベンチャー。これまでとだいぶ毛色が違うけど、これはこれで面白かった。一方、王国にたどり着いてからの展開はほとんど印象に残ってない。個々のキャラ立てが不十分ですし、アクション要素も足りず、いささか物足りなかったです。作者が自分の好みに心地よく浸っているにすぎないからではないか(これまでは自分の好みを「破壊」していた)、と、解説に触発された結果、思う。

読了日:03月09日 著者:笠井 潔,武内 崇



脳ミソを哲学する (講談社プラスアルファ文庫)脳ミソを哲学する (講談社プラスアルファ文庫)

筒井御大と様々な分野の専門家による対談集。幅広いですが、それぞれの分野についてはボリューム不足です。御大の受け答えも「ほぉ、そうですか」で終わってたりして、話が発展していない。もちろん知らないことも多かったので、あくまでも一般教養本て感じかな…。元が1995年だから、ヒトゲノムなど古い話があるのは仕方ない。個人的には、佐藤文隆の先端科学に関する話が興味深かったです。

読了日:03月10日 著者:筒井 康隆



ヴァンパイヤー戦争〈9〉ルビヤンカ監獄大襲撃 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈9〉ルビヤンカ監獄大襲撃 (講談社文庫)

舞台はアフリカからヨーロッパ、そしてモスクワへ。アフリカ編が何か中途半端な気がするのは、底本の部分が前巻で終わっていて、後から付け足したようになってしまっているからでしょうか。正直この部分、要らなかった気がする。後半もイマイチ脂が乗りきってない、歯切れの悪い文章で、あまり楽しめなかった。アフリカ編後のリハビリ期間て感じ。

読了日:03月11日 著者:笠井 潔,武内 崇



音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

音楽を語る批評言語として、「身体性の共振」を挙げているのが、とりわけ興味深い。ただ、実際にどういった言葉が有効なのかというのはよく分からないままだけど。また、自分の文脈を意識しながら、そこから外れたものを排除せずに聴く、という姿勢も正しいと思う(なかなか出来ないことですが…)。恐れずしかし奢らず、音楽について「語る」べし。他にも色々と示唆に富んでて面白かった。

読了日:03月13日 著者:岡田 暁生



ヴァンパイヤー戦争〈10〉魔神ネヴセシブの覚醒 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈10〉魔神ネヴセシブの覚醒 (講談社文庫)

ロシアで主人公が閉じ込められてたら、陰謀が張り巡らされてどんでん返しが起きる、という話の流れです。一人称ということもあり、読み手の側も、蚊帳の外でガヤガヤ動いていつの間にか急展開、という感じでポカーンとなってました。最終巻に向けて収拾に走っている感じで、大破壊が起きてもいまひとつ緊張感がないですね…。解説はついにクトゥルフ神話が来ました。こちらもクライマックスです。

読了日:03月15日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争〈11〉地球霊ガイ・ムーの聖婚 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈11〉地球霊ガイ・ムーの聖婚 (講談社文庫)

完結。最後は月面に行って宇宙戦争まで始めちゃったよ! いきなり舞台が変わったので、正直面食らいました。しかし、どんなにスケールが大きくなったとしても、この本の根底は変わらない。つまり「女の官能的な肉体こそおれをほんとうの世界に導くはずだ。そこで自分は、ほんとうの自分にめぐりあうことができる…」。解説も含めて、大作でありました。お疲れさまでした自分。

読了日:03月16日 著者:笠井 潔,武内 崇



鮮血のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険1> (講談社文庫)鮮血のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険1> (講談社文庫)

外伝ということで、九鬼の若き日の冒険です。でも基本的なバイオレンスアクション路線は正伝と同じですし、若さ故の性格ってところも、もともと猪突猛進型だからあまり違いが無いような。色欲を知らないってところくらいでしょうか(まあそこが大きいのかもしれませんが)。ウスペンスキーが出てきたりと、外伝ならではの楽しみ方は一応あります。

読了日:03月17日 著者:笠井 潔



ゼロ年代の音楽---壊れた十年ゼロ年代の音楽---壊れた十年

ゼロ年代統括、みたいなのは無し。細分化された音楽が個別に語られる形式。最初の鼎談は未整理感が強くてイライラした。個人に則した自分語りとしても、磯部氏や二木氏は、日本のヒップホップについて一応筋道を付けているというのに。「壊れた十年」がエクスキューズに聴こえる。150枚のディスクガイドは逆に、セレクトや内容も含めて個性的で面白くはあったのですが。

読了日:03月20日 著者:野田 努,三田 格,松村 正人,磯部 涼,二木 信



疾風のヴァンパイヤー 九鬼鴻三郎の冒険(2) (講談社文庫)疾風のヴァンパイヤー 九鬼鴻三郎の冒険(2) (講談社文庫)

秘密工作員になった九鬼が日本で活躍するなど。この疾風と、次巻の雷鳴で上下巻て感じです。正伝読み通したので、ほとんどお付き合い気分で読んでいます。ソツの無い出来とは思いますが、ヴァンパイヤー出てこない時点で別に伝奇モノでもなく、九鬼は既に完成された人格であり、これまでと何ら変わらないので、何のためにこの本があるのか、よく分からなくなってきました。

読了日:03月21日 著者:笠井 潔



ゲームラボ 2010年 04月号 [雑誌]ゲームラボ 2010年 04月号 [雑誌]

クトゥルー神話特集目当て。いわゆる「クトゲー」だけでなく、さりげなく紛れ込まれているゲームも取り上げていて、単純に調査量がすごいなと。そこまで広げると、Wiz も FF もみんな入ってきちゃうわけですけど、それだけクトゥルー神話群が、皆の無意識に這い寄っているということか。エターナルダークネスやりたい。

読了日:03月21日 著者:



雷鳴のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険3> (講談社文庫)雷鳴のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険3> (講談社文庫)

完結。香港からベトナムへ。九鬼はベトナム帰りの傭兵になりすましたりします。途中の軍人さんがやたら喋るのを読みつつ、笠井先生がベトナム戦争の話がしたかっただけなのでは…と思いました。あとようやく「愛情でも恋情でもない、湧きたつように強烈な欲望」に目覚めましたね。待ってました(笑)。前巻から仕込まれた伏線の回収は良かったです。

読了日:03月21日 著者:笠井 潔



新版 サイキック戦争I 紅蓮の海 (講談社文庫)新版 サイキック戦争I 紅蓮の海 (講談社文庫)

ヴァンパイヤーの次はサイキック。「コムレ・サーガ」を根底に敷いた、同一の神話群です。主人公が「連合革命軍」の裏切り者とは、笠井先生らしいテーマ設定だなと思う。他にも色々とダメな主人公ですが、それが自虐的ナルシシズムを感じさせますね。ベトナム戦争と絡めたストーリーは、思いのほか陳腐でいささかしょんぼり。サイキックアクションが全然炸裂しないのも何だかなーという感じです。最後だけ少し盛り上がったけど。というわけで、あまり期待せずに次巻へ。

読了日:03月23日 著者:笠井 潔



新編 風雲ジャズ帖 (平凡社ライブラリー)新編 風雲ジャズ帖 (平凡社ライブラリー)

ブルーノート研究と、日記と、ジャズピアノ講義を収録。研究は一見理論的なのですが、突き詰めずに感性で突っ走るところもあって、勿体無いと思いつつも、それこそが音楽であるからして、良い意味でやっぱりアーティストだなという感じ。日記部分は本当にハチャメチャですね。なぜそんなにピアノを壊す。楽しく無邪気なハチャメチャさは、今の時代では出せない空気かなとも感じる。

読了日:03月25日 著者:山下 洋輔



新版 サイキック戦争II 虐殺の森 (講談社文庫)新版 サイキック戦争II 虐殺の森 (講談社文庫)

完結。最後にようやくサイキック対決になる。ずいぶん駆け足になりましたね。ストーリーは正直楽しめなかったけど、倫理観も成長も棄てて初めて、真の力に目覚めるってのは面白いなと思いました。結局そのきっかけが「官能的な唇」だったのには、ああやっぱりねと笑えた。あと、前島賢の解説は、笠井先生の小説をセカイ系の起源に求める偽史的な試みで面白かったです。

読了日:03月26日 著者:笠井 潔



帝都物語〈12 大東亜篇〉 (角川文庫)帝都物語〈12 大東亜篇〉 (角川文庫)

昭和二十年夏、ソ連侵攻直前の旧満州の帝都・新京が舞台。映画で本物の「鬼」を撮ろうとする甘粕の狂気とか、面白かったです。最後に大破壊でみんな死んじゃった、みたいな話の適当っぷりも潔し。あと、死者の魂が戻らずに身体だけ蘇ってしまったという「虚亡子」のくだりが一番興奮した。キョンシー

読了日:03月29日 著者:荒俣 宏



われら猫の子 (講談社文庫)われら猫の子 (講談社文庫)

短篇集。現実の中にドロリと顔を出す幻想性を、子ども(産む産まれる親になる)を軸に展開させていく話が多く、どれも作者にしてはあっさり目という気もしますが、総じて面白かったです。熱情が迸り、むせ返るような熱さを持った濃密な文章は、最後の「エア」でばっちり堪能できましたしね。寒いのに汗かいてしまった。

読了日:03月30日 著者:星野 智幸



読書メーター



以下雑感。
ヴァンパイヤー戦争、外伝も含めて一通り読み終わりました。積読消化のつもりで読み進めたのですが、途中から残りの巻を買い揃えたりしてしまったので、効果は全くなし…。最初は普通に伝奇モノとして楽しんでましたが、途中から舞台や作風が変化していくにつれ、唖然とするやら笑えるやらというのが多く、これはこれで楽しめました。
シリーズものを一気に読むというのは、間に挟まれる別の読書も含めて、習慣づけとして良いと思ったので、今後も続けたいです。何気に帝都物語も全部読んだことになるのかこれで。次は銀英伝アルスラーンに手を出すか、積読中の北方水滸伝に行くか、色々と迷い中です。
音楽系の書籍は(「音楽の聴き方」や「ゼロ年代の音楽」など)、読書メーターのコメントだけでは書ききれないメモ量になっているので、別の機会・場所で整理したいと思います。

ライブテープ @ 京島・橘館

「ライブテープ」を観てきました。
監督:松江哲明。主演:前野健太
74分ワンカットで、前野健太がギターを弾き語りしながら、吉祥寺の街を練り歩く映画。
http://www.spopro.net/livetape/
会場は、商店街の中にある小さな建物で、30人も入れない大きさ。昔の店舗を改装したのでしょうか、シャッター閉めてそこに幕を垂らし、プロジェクターで上映という形式で、それ自体がとても面白かった。上映中、雨がシャッターを叩く音とか、外を歩く人の話し声が聞こえてきたりして、映画の雰囲気というか、コンセプトとよく合っていたと思う。
映画の内容は前述の通りなのですが、音に色々な質感があって、特に面白かったです。ちょっとバランスが悪かったのか、聴き取りづらいところがあって、主催者さんが終了後に謝っていましたが、あれ自体演出って感じなのではと受け取っていたし、全く理解できないわけでも無かったのでいいのではないでしょうか。唄のところは、エフェクトが逆に分かりやすくなってて、面白かったようにも思います。
松江監督が、前野さんを良い意味でダサくしていく過程がとても良かった。唄が上手すぎたりするのは、彼の功罪という気もするけど、そこを超えて、素の部分を出していくというか、内面の熱さを引き出していく過程にはゾクゾクした。
放映後、近所の公園(!)にて、トークショーとライブ。商店街を歩いて公園に向かい、最後にライブという、まさに「リアルライブテープ状態」。
トークショーでは、松江監督のドキュメンタリーに対する分かりやすい解説、すなわち、「ドキュメンタリーには演出が必要である。それは、出演者の素の表情であるとか、録り手の意図を超える出演者の反応を引き出すため」という感じのコメントが再確認出来て良かったです。自分が最近「水曜どうでしょう」ばかり観ているのも、こういうことが好きだからなのかなと、ふと思いました。
前野さんのライブも良かったです。やはり声がとても良いので、普通のライブはかなり聴かせますね。環境的には大変そうでしたが、「辛い環境だからこそ出てくる唄がある」という感じで、いささか感動を覚えました。それにしても、松江監督は「自分は晴れ男だから絶対晴れます」と言っていたのに、やっぱり止まなくて、それどころか、クライマックスの「天気予報」では大雨になってて、前野さん、どんだけ雨男だよ、と思いました。ちょうどパトカーが通りかかったりとか、奇跡のような場面。アンコールにすべり台に上って、終わったらそのまま滑り降りるやんちゃさにも興奮しました。
というわけで、良かったです。それにしても、墨田区京島から見える東京スカイツリーは衝撃でした。靄の中、塔だけが突出してそびえ立っていて、こちらを見下ろしているような感覚に襲われる。サイバーパンク的な近未来みたいだな…。

[Book] 読書メーター2010年2月分まとめ

先月分のまとめです。
2月の読書メーター

読んだ本の数:20冊

読んだページ数:5922ページ



くたばれPTA (新潮文庫)くたばれPTA (新潮文庫)

ショートショート集。表題作含め(何というタイトルか)、過激な内容が多いです。分量が短いと、アイデアがナマのまま出てくるような感じになるので、よりインパクトが強烈な気がする。おそらく「これこれのお題で小噺をひとつ」みたいな依頼を受けて書いてるのもあるのでしょう。日ごろの恨みを叩きつけるような文章になってるのもあり、面白かったです。別の意味で「やっつけ仕事」である。

読了日:02月01日 著者:筒井 康隆



串刺し教授 (新潮文庫)串刺し教授 (新潮文庫)

短篇集。タイトルそのままの内容だったり(「言葉と〈ずれ〉」等)、文章が直截的だったりと、練りこみきれてないような、乱暴さを感じる作品が多いです。それはそれで魅力ですし、かえって分かりやすくなってたりもするけど、純粋な面白さは若干弱いかなと思った。「シナリオ・時をかける少女」には唖然呆然。あのジュブナイルを自らの手でここまで落とすとは。

読了日:02月03日 著者:筒井 康隆



新帝都物語  維新国生み篇 上 (角川文庫)新帝都物語 維新国生み篇 上 (角川文庫)

明治維新期(戊辰戦争など)の最中に暗躍する加藤重兵衛! あまりにも文章が平易なので、自分にしてはすごいスピードで読んだ。内容はお決まりの展開連発で面白かったです。元祖帝都物語と、話の流れがほとんど変わらねぇ…。上巻ラストの怨霊オールスターズには爆笑。下巻へ続く。

読了日:02月05日 著者:荒俣 宏



新帝都物語  維新国生み篇 下 (角川文庫)新帝都物語 維新国生み篇 下 (角川文庫)

下巻は薀蓄も少なく、ひたすらバトルシーンの連続であっという間に駆け抜けて終了。勢いに飲み込まれ、黄泉の世界に落ちてしまいそうでした。この「何も残らない感」はある意味、爽快ですらあります。あと、不謹慎なことは百も承知ですが、最後の加藤、田村、土方の絡みが、絵面的にどうしても可笑しくて笑ってしまった…。

読了日:02月08日 著者:荒俣 宏



帝都物語〈11 戦争(ウォーズ)篇〉 (角川文庫)帝都物語〈11 戦争(ウォーズ)篇〉 (角川文庫)

昭和20年の東京を舞台に暗躍するメソニックとか本願寺とか「か・と・う」とか。そうか、あれは呪いだったのか! みたいな。アイデア一発勝負って感じの内容で、小説としては書き込み不足だったり面白みに欠ける部分はありますが、まあ本編完結後の外伝的作品だからしょうがないか。本編に入れて、もっとじっくり取り組めば、かなり面白くなったと思いますけど。

読了日:02月09日 著者:荒俣 宏



異能使い リプレイ 鳴神の巫女 (ファミ通文庫)異能使い リプレイ 鳴神の巫女 (ファミ通文庫)

きくたけとクレバー矢野によるリプレイ1本ずつ収録。きくたけは相変わらずきくたけ節だなぁとしか。笑えるし面白いけど何のゲームをやっても同じに思える。矢野さんは追加サプリを踏まえた堅実な出来。どちらも佳作です。システム自体は現代伝奇・超能力モノで良く出来ていると思うけど、やっぱりダブクロ系の亜種という印象は否めない。真名や予感など、光る要素は結構ありますが、ニッチ的な突き抜けまでには至らない感じ…。

読了日:02月10日 著者:菊池 たけし,矢野 俊策



機関(からくり)童子―帝都物語外伝 (角川文庫)機関(からくり)童子―帝都物語外伝 (角川文庫)

カトーのコスプレをする精神病院の患者が巻き起こす狂気の世界。作中に「帝都物語」の小説とか映画が出てきたりと、内輪向け要素満載なので、割り切って楽しみました。話の内容自体は短篇レベル。

読了日:02月11日 著者:荒俣 宏



松本人志 愛 (朝日文庫)松本人志 愛 (朝日文庫)

テーマ別に語り下ろし。今読むと色々と興味深い、という穿った見方はともかく、正論を言ってるなというのが多かった。普通に皆が思っているけど中々言えないようなことを、公の場で素直に言ってくれるところに、共感を覚えるのかしら。でも今ならみんな、ネットでつぶやいているようなことだよね。

読了日:02月11日 著者:松本 人志



燃えよペン (MF文庫)燃えよペン (MF文庫)

これが噂の燃えよペンか…。作者自身の芸風と、ちょっとした内輪っぽさと、圧倒的な熱さと、すべてがバランスよくまとまっていて、最高に面白かった。ネタに走り切らず、かといって内に向きすぎてない、熱い筆致と冷静な構成が、奇跡的なバランスで、見事にエンターテインメントしてると思う。12話ですぱっと終わるのも清々しい。

読了日:02月11日 著者:島本 和彦



玩具修理者 (角川ホラー文庫)玩具修理者 (角川ホラー文庫)

小林泰三初読。表題作はドロッとしたホラー。描写が息苦しくてよいです。クトゥルフ神話オノマトペが出てきて興奮した。もう一篇の「酔歩する男」はタイムスリップ SF の要素を盛り込んだホラーで、どこまでも続くループそして出口の無い閉塞感に頭クラクラ。筒井康隆のきっつい部分を凝縮したような味わい。

読了日:02月12日 著者:小林 泰三



ヴァンパイヤー戦争〈1〉吸血神ヴァーオゥの復活 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈1〉吸血神ヴァーオゥの復活 (講談社文庫)

正統派の伝奇小説って感じでしょうか(再発時の表紙絵は、明らかな狙いが見てとれますね)。バイオレンスアクションがふんだんに盛り込まれてて面白いけど、強い敵を倒して、「イイ女」とヤるってところにカッコヨサを見出すマッチョさが笑える。「オレは一匹狼さ」とか自分から言わないだろフツー(笑)。最後はオカルト、SF な要素が炸裂しつつ、次巻へ。引きは良いと思います。一応続きも読む。

読了日:02月16日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争〈2〉月のマジックミラー (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈2〉月のマジックミラー (講談社文庫)

2巻にしていきなり話が飛んだ。主人公がやたらとやられるようになって、爽快感は減退。日本オカルト古代史全開な方向性は好きですが、笠井先生が自身の「趣味」と公言するハードポルノ路線の描写は少々キツくなってきました。それにしても、娼婦と聖母に惹かれる典型的なオトコノコ像はブンガク的でありますな(笑)。あと、笹川吉晴の解説が脱線しまくりで面白いです。全巻の解説使って、伝奇小説を軸に日本のエンタメ史を俯瞰せんとす、みたいな勢い。本が一冊出来るぞ。

読了日:02月17日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争(3) 妖僧スペシネフの陰謀 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争(3) 妖僧スペシネフの陰謀 (講談社文庫)

冬山の闘い。オカルト的な設定は、これで一通り吐き出されたのかな。いわゆる「つなぎ」に近い巻だと思います。そのせいか、これまでよりもだいぶ読みやすくなったのは皮肉な話ですが、普通に面白く読めました。解説の笹川吉晴は吸血鬼史。圧倒的な調査量で怒濤の理論を展開。正直、本編より面白くなってきました。

読了日:02月18日 著者:笠井 潔



アホの壁 (新潮新書)アホの壁 (新潮新書)

様々な「アホ」分析など。フロイトと脳に拠った分析が続きますが、分かりやすいけどあっさりしすぎてて物足りなかった。言い間違いのくだりとか、焦点的自殺とか、もっとくどいくらい書き込んで欲しかったです。あっさりと幕を引いてしまったところも含めて、ちょっと御大らしくないと思います。終章の「アホ」連発は、文章的にミニマル感があって笑えたけど。

読了日:02月19日 著者:筒井 康隆



バカの壁 (新潮新書)バカの壁 (新潮新書)

「アホの壁」ついでに読んでみました。至極真っ当な内容の訓話みたいなのを、いきなり方程式とか持ち出して困惑させた後で、分かりやすく説明して差し上げるという、値切り交渉みたいな内容だと思いました。脳関係ないような気が…。

読了日:02月20日 著者:養老 孟司



明治大正見聞史 (中公文庫)明治大正見聞史 (中公文庫)

タイトル通りの回想録。帝都東京が市民目線で語られているので興味深く読めた(筆者は新聞記者であるから決して「庶民」ではないが、それが彼を「傍観者」たらしめているため)。大震災直後の章が一番面白い。町全体に漂う目に見えない不穏な空気がよく出ていて大変良かった。内容はここで終わっているが、復興後の話も読みたかったと思う。

読了日:02月22日 著者:生方 敏郎



ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

テーマは教育、年金、社会保障、医療、刑務所。いずれも巨大な市場に支配され、人々が容赦なく落とされていくことに恐怖を覚える(前作よりも対岸の火事では済まされない感がある分、余計に)。最後にフランクリン・ルーズベルトの小話を持ち出しつつ、「リーダーを誘導せよ」と訴えている点は、真の民主主義を実現せよ、という叫びにも聞こえた。

読了日:02月23日 著者:堤 未果



ヴァンパイヤー戦争〈4〉魔獣ドゥゴンの跳梁 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈4〉魔獣ドゥゴンの跳梁 (講談社文庫)

日本の次はロシアかな。鬼、ゾンビ・コマンド、怪僧スペシネフ、魔獣ドゥゴンと、だんだんとっ散らかって参りました。そしてまたしても九鬼の前から消える「黄金の女」(笑)。これ上手くまとまるんだろうか。笹川吉晴の解説は、ゾンビや日本におけるクトゥルフ神話の展開に言及しつつ、更に吸血鬼を掘り下げる内容。毎度毎度クオリティ高いです(解説は)。

読了日:02月24日 著者:笠井 潔,武内 崇



仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本

かなり個性的なプロマネ本。最終章になってやっと「スケジュール」という言葉が出てくることに代表されるように、ゲーム制作が元とはいえ一風変わっています。プロジェクトを「冒険」に見立て、ドット絵を取り入れたトータルデザインもいい感じ。もちろん一般的なプロジェクトにも応用は効くけど、個人的には、巨大化+組織化したプロジェクトで、どこまで上手く「冒険」を進めていけるか、というところは悩ましい。人数的にドラクエ4くらいが限界ではなかろうかという気もするが…。

読了日:02月25日 著者:米光 一成



ヴァンパイヤー戦争〈5〉謀略の礼部クーデタ (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈5〉謀略の礼部クーデタ (講談社文庫)

第一部完、て感じで面白かったです。お話を全力で転がしにかかった結果、エグさが少し弱まって読みやすくなった感じ。それでもドゥゴンはすごかったけど。この描写ってまんまクトゥルフじゃないか。名前はダゴンですが。日本史も知らない主人公が、なぜペリシテ人が信奉していた神を知っていたのかは謎。あと、毎巻ごとに主人公とまぐわう女性が次々と出てきては去っていく様はまさにエロゲーですね。

読了日:02月26日 著者:笠井 潔,武内 崇



読書メーター



以下雑感。
引き続き2月も積読解消月間。新刊は新書2冊(アホとアフリカ)だけですね。しかし、新刊買うのをやめても古本での補完が増える一方です。初めて読んだ小林泰三が面白かったので、他の作品も読んでみたい。
1月の反省から読むスピードを意識するようにしたので、全体的な読書量は増えました。ゆっくり読んでもどうせ細かく覚えてるわけではないし、読み飛ばしたっていいやと、開き直ったのが良かったのかもしれません。「帝都物語」や「ヴァンパイヤー戦争」など、あまり脳を使わない本から始めてますが(特に笠井先生は文章が硬くて読みづらいとよく言われるけど、だからこそ逆に読み飛ばしやすいです)、果たして他の本でどこまでいけるか。

[Book] 読書メーター2010年1月分まとめ

先月分のまとめです。1月はほとんど新しい本を買わず、積読本の消化に努めました。エッセイとか、軽いものばかり読んでいますが、裏で重いものをちまちま読み進めているからであります。結局読み終わってないけど…。
それにしても、読書量の相変わらず少ないことよ。じっくり読むことも必要ですが、速読「も」ある程度はできるようにならないとダメですなぁ。
1月の読書メーター

読んだ本の数:9冊

読んだページ数:2899ページ



ゲームホニャララゲームホニャララ

ひと癖もふた癖もあるエッセイ。ゲームが好きだけど最近何だか遊ぶのが辛い、そんな複雑な心境が内容に表れていると思った。ゲームを斜めから見るような視点は新鮮で、時折目の覚めるような思いを抱いたりする。古いゲームを「現役として」楽しむ、これもまた、ゲーム愛のかたち。映画で云う「ある視点」部門の作品賞という感じでありました。ただの偏屈と言えば偏屈ですが、個人的には、ひょうひょうとした文体も相まって、味わい深い。イラストも雰囲気とよく合っていると思います。

読了日:01月06日 著者:ブルボン 小林



文学部唯野教授のサブ・テキスト (文春文庫)文学部唯野教授のサブ・テキスト (文春文庫)

唯野教授への100の質問的な読み物や、筒井へのインタビュー、ポスト構造主義的「一杯のかけそば」分析という名の壮大なネタ等。コンテンツに関連性は無いので、題名通り副読本という感じでしょうか。内容は非常に面白いです。かけそばはかなりの爆笑レベル。朗読会とかでやってくれないだろうか。あと、最後の鼎談(河合隼雄鶴見俊輔と著者)で、ニセ留学の件を誤読していたくだりが興味深かった。読者として「正しい」誤読だと思う。

読了日:01月08日 著者:筒井 康隆



風の聖痕RPGリプレイ - 深淵の水龍 (富士見ドラゴンブック 28-2)風の聖痕RPGリプレイ - 深淵の水龍 (富士見ドラゴンブック 28-2)

同名小説のTRPG版のリプレイ。原作は未読、TRPG版も未プレイですが、何かのネタになればと思って読んでみたところ、マスターの恐怖描写が独特でとても面白かった。不可思議な擬音を使ってたりして、何だか怖い。意外な収穫でした。システムはダブクロ、デモパラの亜種って感じで、特に気になる点はなし。シナリオの内容も、原作の未読者にとっては特筆すべきところは無いかなという感じでした(そもそもそんな人、対象にしてないか)。

読了日:01月10日 著者:三輪 清宗,F.E.A.R,山門 敬弘



筒井歌舞伎 影武者騒動 (新潮文庫)筒井歌舞伎 影武者騒動 (新潮文庫)

「筒井歌舞伎」3篇収録。表題作は登場人物の正体が「実は…」「実は…」でクルクルと入れ替わり、大混乱のまま突っ走るスラップスティック。脳がウニになる…。その他2篇は、分量としてはこちらの方が長くて、読み応えたっぷりでした。こちらも要素としては「影武者」的ではある。面白かったです。これ、実際に上演されたことあるのかなぁ。

読了日:01月14日 著者:筒井 康隆



ジーザス・クライスト・トリックスター (新潮文庫 - 筒井康隆劇場)ジーザス・クライスト・トリックスター (新潮文庫 - 筒井康隆劇場)

脚本集。どれも非常に面白くて素晴らしい出来。不謹慎さ丸出しが爆笑を誘う表題作。ドロドロとした疑心暗鬼の渦に巻き込まれて背筋が寒くなる「人間狩り」。狂言回しが狂人なので話が無茶苦茶になる「三月ウサギ」が特に良かった。実際に演劇化されたものが観てみたいです。

読了日:01月15日 著者:筒井 康隆



狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)

新聞連載(夕刊フジ)の随筆集。100本以上収録。35年以上前のエッセイですが、どれも面白かった。毎日連載してたのかこれ、すごいな。当たり前のような命題の中で、時折、毒舌が炸裂するのが快感。明らかにネタに困ってるなぁという日もあるのですが、それを逆手に取って面白おかしく仕上げてしまう(替え歌だけで一話持たせたりとか)のは、やはり素晴らしいです。文章は端正、だからこそ、内容の過激さは狂気を帯びるのである。山藤章二のイラストも力作揃いです。

読了日:01月20日 著者:筒井 康隆



脱走と追跡のサンバ (角川文庫 - リバイバルコレクション エンタテインメントベスト20)脱走と追跡のサンバ (角川文庫 - リバイバルコレクション エンタテインメントベスト20)

変な世界に迷い込んだ「おれ」が脱走するぞ的な話、かと思いきや、その奇妙に歪んだ世界こそが現実の縮図であるかのような、酩酊感をともなうマジックリアリズム的小説。後半に至るにつれ、加速度的に混沌が深まり、頭が痛くなるほど…。読むのにえらい時間がかかってしまった。でも面白かった。最後に思い切り前衛的に振り切って、ある意味分かりやすく締めたところも彼らしいなと感じる。

読了日:01月26日 著者:筒井 康隆



趣味は読書。 (ちくま文庫)趣味は読書。 (ちくま文庫)

ベストセラーめった斬り書評集。面白おかしい語り口なので、楽しく読めます。豪快にネタバレしているのも気持ちよい。ベストセラー化の分析がまさに一刀両断なので、本の「ねらい」とものの見事にハマる人々を完全に笑い飛ばすこともできず、身につまされる部分も若干あり…、という感じでした。斎藤さんは最近だと、勝間和代をどう評しているのか、気になります。もうどこかでやってるかな?

読了日:01月28日 著者:斎藤 美奈子



読者は踊る (文春文庫)読者は踊る (文春文庫)

書評集。テーマ別に結構な数の本を読み込んだ上で書いているので、説得力がありますね。毒舌というか、世間の評判とか売行きに対して冷水を浴びせかける、いわゆる「社会学的」な考察が面白いです。公の場で「王様は裸だ」とちゃんと言ってくれる人という感じ。

読了日:01月30日 著者:斎藤 美奈子


読書メーター

読書メーター2009年12月分まとめ

先月分のまとめです。TRPG のリプレイが多いな…。リプレイって、一冊読み終わると、続けて他のリプレイに手が伸びてしまいます。会話だけで構成される文章のリズムに慣れてしまうと、普通の小説に戻るタイミングを逸してしまうというか。なので、全体的にちょっとライトな感じ。
12月の読書メーター

読んだ本の数:8冊

読んだページ数:2412ページ



トーキョーN◎VA The Detonation リプレイ ビューティフルデイ あるいはヒュー・スペンサー最後の事件 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)トーキョーN◎VA The Detonation リプレイ ビューティフルデイ あるいはヒュー・スペンサー最後の事件 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

N◎VAの基本を押さえた素晴らしいリプレイ。そうか、N◎VAってこんなゲームだったなと、改めて思わせられる内容で、とても面白かった。設定とかシナリオはオーソドックスでありきたりかもしれませんが、各人のプレイレベルが非常に高く、読み応えのある内容。稲葉義明の得意技である落ち着いた語り口もあって、雰囲気は抜群に良いし、ルール面では、特技コンボなど基本を押さえたわかりやすさなので(ブランチ等の応用面は無し)、プレイ指南としても良質。今度はアストラル方面を踏まえたリプレイも読みたい(ナイトウォッチも出たし)。

読了日:12月04日 著者:稲葉 義明



ブレイド・オブ・アルカナ The 3rd Edition リプレイ 剣十字の騎士 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)ブレイド・オブ・アルカナ The 3rd Edition リプレイ 剣十字の騎士 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

ブレカナの基本を押さえた、良質なリプレイ。1本目はまさに定番なシナリオって感じ。2本目は変則的なシナリオながら、ドラマティックな展開で非常に読み応えがあった。最後のしかけは上手い。キャラもよく立っているし。特技等の説明がわかりやすく、ルール指南としての側面もちゃんとしてるのも良いです。注釈とかをちゃんと入れたいから、最近のリプレイは単行本サイズで出すのかしら…。稲葉さんのリプレイは『ハイデルランド英雄譚』のが最高傑作と思うけど、このリプレイもとても面白かったです。バスカニア、いいキャラだにゃあ。

読了日:12月11日 著者:稲葉 義明,F.E.A.R.



クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく (ログインテーブルトークRPGシリーズ)クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

現代クトゥルフのリプレイとして普通に良い出来。3本収録で、それぞれ定番シナリオって感じで、シナリオ作りの参考になったし、内容的にも楽しめました。個人的に、キーパーをしていると宇宙的恐怖の描写にいつも苦労するので、その辺が特に参考になります。各キャラも、ずば抜けて素晴らしいロールプレイということは無いのですが、かえってリアルに我々のプレイングに近い印象で好感が持てます。狐印のイラストは、ちょっと微妙に合ってない気もするけど、今が旬てことでまあいいんじゃないでしょうか。まさにニャル子逆輸入状態。

読了日:12月15日 著者:内山靖二郎



ダブルクロスThe 3rd Editionリプレイ・ジェネシス(2)  日常のボーダーライン (富士見ドラゴンブック 30-12)ダブルクロスThe 3rd Editionリプレイ・ジェネシス(2) 日常のボーダーライン (富士見ドラゴンブック 30-12)

2巻の最終盤になってやっと、話が転がり出した感じ。非常に丁寧に作られていると思うのですが、それが全体のテンポを悪くしている印象が無きにしも非ず。一般のプレイヤーに近い形で、リアルなリプレイを表現しようとしているのかもしれませんが、PC間の絡みは掛け合いというより馴れ合いに近く、いささかもどかしい。唯一、神月先生の熱くて愉快なロールプレイは素晴らしいと思う。一応、次巻以降の展開には期待していますが…。

読了日:12月20日 著者:F.E.A.R.,伊藤 和幸



風立ちて“D”―吸血鬼ハンター 2 (朝日文庫―ソノラマセレクション (き18-2))風立ちて“D”―吸血鬼ハンター 2 (朝日文庫―ソノラマセレクション (き18-2))

シリーズ2冊目。村の少女リナとその周囲を巡る、とても切ないお話で、Dは狂言回しと化しており、彼の華麗なアクションはあまり見られませんが、ドロドロとしていて、かつ陰惨で悲劇的な、いかにも吸血鬼モノといった雰囲気は、個人的にかなり好みでした。テーマ的にも定番で手堅い内容と思います。

読了日:12月22日 著者:菊地 秀行



アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

ソードアートでも思いましたが、ゲームの中に「取り返しのつかないこと」という設定が、非常に効果的に盛り込まれていると思います。月並みな言い方ですが、リセットが出来ないゲーム、であることを知ると、何だかドキッとする感じが。喪失を描く、ジュブナイルとしても機能しているわけで。ゲーム小説の常かもしれないけど、アプローチが上手いなと。物語もノンストップで読みごたえがあって、面白かったです。

読了日:12月26日 著者:川原 礫



解雇手当(ハヤカワ・ミステリ文庫) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ス 17-2)解雇手当(ハヤカワ・ミステリ文庫) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ス 17-2)

社長が突然、社員を皆殺しにしようとする小説。帯や煽り文句はバトル・ロワイアルですが、中身はもっと個々人にフォーカスしており、濃密な描写がこれでもかと続き、お腹いっぱい。タランティーノの映画みたい。設定は陳腐極まりないので、そこを楽しむよりは、執拗に繰り広げられる過激な暴力描写を楽しむサド小説って感じ。看板に偽り有りかと思うけど、これはこれでアリかな。

読了日:12月30日 著者:ドゥエイン・スウィアジンスキー



もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

マネジメント=野球部のマネージャーという発想の飛び方が絶妙で、面白いなと思った。読み手にイメージを補完させるという意味で、対象に非営利組織を持ってきた距離感もちょうどいいと思う。意図してかどうかは不明ですが、高校野球そのものに対して、シニカルな視点になっているのが面白かったけど、これは考えすぎでしょうか。物語は非常に分かりやすくて読み易さ優先という感じですが、見事に「感動をマーケティング」出来ているし、良かったと思います。そういえば、選手宣誓では「夢や感動を与えることを誓います」とか言うよね。

読了日:12月31日 著者:岩崎 夏海


読書メーター

How do you like Wednesday?

akiu2010-01-05


2009年は、「水曜どうでしょう」にハマった一年でした。イマサラとか言わないで…。
地元のローカルテレビ局が、「水曜どうでしょう classic」の再放送を週三ペース *1 で実施しており、それを録画しては、延々と繰り返し見ていた。その間、他の番組はほとんど見ていない。せっかくハイビジョンテレビ買ったのに、ハンディカメラ録りの画面ばかり見ていたことになる。年末辺りにハードディスクがいっぱいになったので、DVD も買い、それも延々と見ていました。今も見てる。
内容は今更書くまでもありませんが、出演者二人(鈴井貴之大泉洋)、ディレクター二人の、計四人によるバラエティ番組で、基本は旅の記録。いわゆる「旅番組」ではない、ドキュメンタリータッチのリアルな「つさら」や「ひどさ」がウリとでも言えばいいだろうか。
水どうの魅力は、うまく表現しづらいです。格別に「面白い!」ということはないのですが、何故か延々と見続けてしまう中毒性があると思う。気がつくと DVD をつけているし、寝る時も流している。つまり、本を読んだり、ネットをしたり、食事をしたりと、「ホニャララしながら」、ダラダラと見られるのが、良いところかなと思います。良い意味で「隙だらけ」で「ゆるゆる」な作りなのが、魅力かもしれません。例えば、企画開始時は「ホニャララ完全制覇!」と意気込んでても、それが達成できない、なんてことはザラで、いい加減なこと、この上ないのです。その辺の緩さが、こちらもあまり気張らずに見ることが出来るのかなと思う。最近のヤツも見ていますが、10年近く経ってもその緩さが全然変わってないところが、実にいいです。
テレビは、最近の作品を放送後、また最初から始まって、今三年目に突入。アラスカ縦断中です。DVD は、第五弾の212市町村カントリーサインまで見た。まだまだ長い付き合いになりそうです。「一生どうでしょう見ます」と言えるどうかは分かりませんが、まあ今のところそのつもりです。肩肘張らずに、付き合える感じがいいんですよね。
[水曜どうでしょう official website]

*1:水曜に再放送していたところ、4月になって、追加で土曜に二週分の再放送が、また最初から始まった。やりすぎ。今は水曜分は最後まで終わり、週二ペースである。それにしても、そんなに北海道の番組に頼っていいのか、チバテレビよ。

読書メーター2009年11月分まとめ

読書メーターというサイトで読書管理をしているのですが、読み終わった本にコメントを付け始めました。そこで、先月分のコメントについて、まとめて転載したいと思います。一部、別サイトへのリンク付コメントもあるんですが、そこは過渡期です…。
11月の読書メーター

読んだ本の数:16冊

読んだページ数:4029ページ



現代忍術バトルRPG シノビガミ -忍神- (Role&Roll Books)現代忍術バトルRPG シノビガミ -忍神- (Role&Roll Books)

まだ未プレイですが、ハンドアウトがはじめから対立軸を考慮した出来になっているのが興味深い。既存のシステムでやろうとすると、ルール面でフォローができない分、難しくなってしまいがちなところを、初めからその前提で作っているから良さそう。深淵を現代に持ってきて、ダブクロ的なエッセンスを振りかけつつ、パラノイア的構造をルール面で補完したって感じ。リプレイも面白かった。早くやってみたい。

読了日:11月01日 著者:河嶋 陶一朗,冒険企画局



シニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮デイズシニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮デイズ

迷宮キングダム』から王国経営を無くしてコンパクトにしたダンジョンモノ。色々なものを「迷宮化」させるアイデアには事欠かないので、マスターは楽しい。あとは意外と「因縁」の扱いが面白いなと思った。凶悪な戦闘バランスは変わらずだから、せっかく感情を結んでも死にやすいんだけどね…。単独だとデータ的に物足りないので、追加サポート希望(R&R でもキングダムばっかりだから…)。

読了日:11月07日 著者:



ソード・ワールドRPGリプレイ・アンソロジー デーモン・アゲイン (ドラゴンブック)ソード・ワールドRPGリプレイ・アンソロジー デーモン・アゲイン (ドラゴンブック)

【★】http://crossreview.jp/akiu/reviews/4829144610
読了日:11月07日 著者:秋田 みやび,藤澤 さなえ,グループSNE,中村 博文,浜田 よしかづ



ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ (ちくま文庫)ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ (ちくま文庫)
【★★★★】http://crossreview.jp/akiu/reviews/4480426280
読了日:11月08日 著者:ブルボン小林



吸血鬼カーミラ 創元推理文庫 506-1吸血鬼カーミラ 創元推理文庫 506-1
レ・ファニュ。名前の響きだけで女性だと思ってた…。【★★★★】http://crossreview.jp/akiu/reviews/4488506011
読了日:11月09日 著者:レ・ファニュ



十七歳の湯夫人【マダム・タン】 (MF文庫 ダ・ヴィンチ か 1-2)十七歳の湯夫人【マダム・タン】 (MF文庫 ダ・ヴィンチ か 1-2)
あっさり薄味。【★★☆】http://crossreview.jp/akiu/reviews/4840128294
読了日:11月11日 著者:勝山海百合



アジアンパンクRPG サタスペアジアンパンクRPG サタスペ
混沌とした世界観とデッドリーなバランスで、遊んでいるうちに(良い意味で)頭がおかしくなってくる TRPG。全部ランダムでキャラを作ったらとんでもないことになった。非常に発生しやすいファンブルを、意図的に出すことで逆転を狙えるという発想がギャンブラーだなぁと。普通に一撃で死ぬので、マスターが開き直ってバンバン殺せるのはいいかも(よくない)。あと、あまり話題にならない(というか他の要素がアク強すぎて霞んでる気がする)けど、実は情報収集ルールが秀逸だと思う。
読了日:11月16日 著者:河嶋 陶一朗,速水 螺旋人



吸血鬼(バンパイア)ハンターD (ソノラマ文庫 (225))吸血鬼(バンパイア)ハンターD (ソノラマ文庫 (225))
「時だましの香」のガジェットが興味深くて面白かった。あと、地の分で「何ということだ!」とか書くのが逆に新鮮でした。講談みたいで。
読了日:11月16日 著者:菊地 秀行



Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)
過去の出来事や、未来の可能性と課題がよくまとまっている。変にビジネスとかに焦点を絞らず、「社会」を論じようとしてる姿勢には共感を覚える。一方で、ツイッターがメディア等に対する監視機能としての役割を果たせるのかなというのは疑問。本書にもある通り、落ち着いた議論には向かないので。あと直接関係ないですが、ネット社会を、人間のコミュニケーションの有り方の変化にフォーカスを当ててみると面白いかなと思った。BBS から SNS、ブログ、そして Twitter。質的な変化という面について。
読了日:11月17日 著者:津田 大介



決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44) (朝日新書)決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44) (朝日新書)
仕訳の積み重ねから理解するのではなく、全体を捉えてから入っていくという視点の転換が面白い。初心者というより、簿記の勉強に挫折した人向け。結局、覚えるしかない箇所は残るので、どこまで納得するかという話だけな気もするけど。
読了日:11月19日 著者:國貞 克則



ダブルクロス The 3rd Edition  ルールブック1 (富士見ドラゴンブック 30-1)ダブルクロス The 3rd Edition ルールブック1 (富士見ドラゴンブック 30-1)
2nd と比べると、HP が増えて防御系キャラの活躍の芽が出てきたのが嬉しい。トライブリードは、取れるエフェクトは増えたけど、逆にこのシンドロームはこのエフェクトが鉄板、みたいなのに縛られる気がする。かなり読み込まないと、うまいコンボを見つけるのは難しそう。ピュアブリードは分かりやすいし強さがグンと増しているので、初めての人はピュアで入るのが理想かなとも思う。そういう意味では、プレイヤーを受け入れる幅が広がり、確実によくなっていると思った。
読了日:11月19日 著者:F.E.A.R.,矢野 俊策



ダブルクロス The 3rd Edition  ルールブック2 (富士見ドラゴンブック 30-2)ダブルクロス The 3rd Edition ルールブック2 (富士見ドラゴンブック 30-2)
追加エフェクト満載でバリエーションが増えたというか、2nd をカバー出来るようになったというか。ここからが始まりだと喜び勇んでみたものの、仲間内ではキャラが中々上がってこない。成長時の経験点消費が多くなったため、2nd からのコンバート時の再現性に問題があるのか。イマイチ気分が乗らないという空気が漂っている気がする。やってみると、面白くなっているのは間違いないのだけど。後、イージーエフェクトと通常のエフェクトが同じレイアウトなので、参照性が悪い。
読了日:11月19日 著者:F.E.A.R.,矢野 俊策



財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書 174)財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書 174)
見るべきポイントを簡潔かつ見た目にも分かりやすくまとめてて面白かった。終盤は専門的な話も入ってくるので、後は各人の目的に合わせて応用していくという感じか。過去の分析はこれで押さえつつ、未来は別の言葉で語られるべきってスタンスはよさげ。
読了日:11月22日 著者:國貞 克則



死刑長寿 (文春文庫 の 1-14)死刑長寿 (文春文庫 の 1-14)
野坂昭如は初めて読んだのですが、表題作は軽妙で皮肉が効いてて面白かったけど、他の短篇はよく分からなかった。文体は確かに特徴的だけど、リズム感が合わなくてつまづきまくり。町田康や舞城の方がエッジが効いてると思うし、過激なお話は筒井康隆の方が巧みだと思う。という感じで、特殊性があまり見出せず…。
読了日:11月26日 著者:野坂 昭如



日経ビジネス Associe (アソシエ) 2009年 11/3号 [雑誌]日経ビジネス Associe (アソシエ) 2009年 11/3号 [雑誌]
個人手帳という究極の自己満足ツールの使い方がみっちり紹介されてて、非常にエモい気分になれます。昨年はまだ実用性があったけど、今年はもう個々人の主張が未整理なまま載ってるばかりで、ある意味異様な特集になっていると思う。しかしみんな、バーティカル型が好きですな…。かくいう私も来年は「ほぼ日手帳」を使い倒す所存です。付録の冊子が昨年より使えないのは×。路線図便利だったのになあ。
読了日:11月27日 著者:



シノビガミリプレイ シノビガミ弐 刃魔激突 (Role&Roll Books)シノビガミリプレイ シノビガミ弐 刃魔激突 (Role&Roll Books)
リプレイと追加ルール。リプレイは【秘密】を最大限に活用した素晴らしいリプレイ。ラストは衝撃と感動が一気にあふれ出てきて、読んでて大変だった。間違いなく大傑作でしょうこれは。追加ルールは一般人が使えるようになったとともに、追加流派など目一杯入ってる。しかし、こんなリプレイみたいなシナリオが果たして作れるだろうか…。ともかく、続刊を激しく希望いたします! あと、欄外の小ボケ(オヤジギャグ的な)が結構好き。
読了日:11月30日 著者:河嶋 陶一朗,冒険企画局

読書メーター