[Book] 読書メーター2010年2月分まとめ

先月分のまとめです。
2月の読書メーター

読んだ本の数:20冊

読んだページ数:5922ページ



くたばれPTA (新潮文庫)くたばれPTA (新潮文庫)

ショートショート集。表題作含め(何というタイトルか)、過激な内容が多いです。分量が短いと、アイデアがナマのまま出てくるような感じになるので、よりインパクトが強烈な気がする。おそらく「これこれのお題で小噺をひとつ」みたいな依頼を受けて書いてるのもあるのでしょう。日ごろの恨みを叩きつけるような文章になってるのもあり、面白かったです。別の意味で「やっつけ仕事」である。

読了日:02月01日 著者:筒井 康隆



串刺し教授 (新潮文庫)串刺し教授 (新潮文庫)

短篇集。タイトルそのままの内容だったり(「言葉と〈ずれ〉」等)、文章が直截的だったりと、練りこみきれてないような、乱暴さを感じる作品が多いです。それはそれで魅力ですし、かえって分かりやすくなってたりもするけど、純粋な面白さは若干弱いかなと思った。「シナリオ・時をかける少女」には唖然呆然。あのジュブナイルを自らの手でここまで落とすとは。

読了日:02月03日 著者:筒井 康隆



新帝都物語  維新国生み篇 上 (角川文庫)新帝都物語 維新国生み篇 上 (角川文庫)

明治維新期(戊辰戦争など)の最中に暗躍する加藤重兵衛! あまりにも文章が平易なので、自分にしてはすごいスピードで読んだ。内容はお決まりの展開連発で面白かったです。元祖帝都物語と、話の流れがほとんど変わらねぇ…。上巻ラストの怨霊オールスターズには爆笑。下巻へ続く。

読了日:02月05日 著者:荒俣 宏



新帝都物語  維新国生み篇 下 (角川文庫)新帝都物語 維新国生み篇 下 (角川文庫)

下巻は薀蓄も少なく、ひたすらバトルシーンの連続であっという間に駆け抜けて終了。勢いに飲み込まれ、黄泉の世界に落ちてしまいそうでした。この「何も残らない感」はある意味、爽快ですらあります。あと、不謹慎なことは百も承知ですが、最後の加藤、田村、土方の絡みが、絵面的にどうしても可笑しくて笑ってしまった…。

読了日:02月08日 著者:荒俣 宏



帝都物語〈11 戦争(ウォーズ)篇〉 (角川文庫)帝都物語〈11 戦争(ウォーズ)篇〉 (角川文庫)

昭和20年の東京を舞台に暗躍するメソニックとか本願寺とか「か・と・う」とか。そうか、あれは呪いだったのか! みたいな。アイデア一発勝負って感じの内容で、小説としては書き込み不足だったり面白みに欠ける部分はありますが、まあ本編完結後の外伝的作品だからしょうがないか。本編に入れて、もっとじっくり取り組めば、かなり面白くなったと思いますけど。

読了日:02月09日 著者:荒俣 宏



異能使い リプレイ 鳴神の巫女 (ファミ通文庫)異能使い リプレイ 鳴神の巫女 (ファミ通文庫)

きくたけとクレバー矢野によるリプレイ1本ずつ収録。きくたけは相変わらずきくたけ節だなぁとしか。笑えるし面白いけど何のゲームをやっても同じに思える。矢野さんは追加サプリを踏まえた堅実な出来。どちらも佳作です。システム自体は現代伝奇・超能力モノで良く出来ていると思うけど、やっぱりダブクロ系の亜種という印象は否めない。真名や予感など、光る要素は結構ありますが、ニッチ的な突き抜けまでには至らない感じ…。

読了日:02月10日 著者:菊池 たけし,矢野 俊策



機関(からくり)童子―帝都物語外伝 (角川文庫)機関(からくり)童子―帝都物語外伝 (角川文庫)

カトーのコスプレをする精神病院の患者が巻き起こす狂気の世界。作中に「帝都物語」の小説とか映画が出てきたりと、内輪向け要素満載なので、割り切って楽しみました。話の内容自体は短篇レベル。

読了日:02月11日 著者:荒俣 宏



松本人志 愛 (朝日文庫)松本人志 愛 (朝日文庫)

テーマ別に語り下ろし。今読むと色々と興味深い、という穿った見方はともかく、正論を言ってるなというのが多かった。普通に皆が思っているけど中々言えないようなことを、公の場で素直に言ってくれるところに、共感を覚えるのかしら。でも今ならみんな、ネットでつぶやいているようなことだよね。

読了日:02月11日 著者:松本 人志



燃えよペン (MF文庫)燃えよペン (MF文庫)

これが噂の燃えよペンか…。作者自身の芸風と、ちょっとした内輪っぽさと、圧倒的な熱さと、すべてがバランスよくまとまっていて、最高に面白かった。ネタに走り切らず、かといって内に向きすぎてない、熱い筆致と冷静な構成が、奇跡的なバランスで、見事にエンターテインメントしてると思う。12話ですぱっと終わるのも清々しい。

読了日:02月11日 著者:島本 和彦



玩具修理者 (角川ホラー文庫)玩具修理者 (角川ホラー文庫)

小林泰三初読。表題作はドロッとしたホラー。描写が息苦しくてよいです。クトゥルフ神話オノマトペが出てきて興奮した。もう一篇の「酔歩する男」はタイムスリップ SF の要素を盛り込んだホラーで、どこまでも続くループそして出口の無い閉塞感に頭クラクラ。筒井康隆のきっつい部分を凝縮したような味わい。

読了日:02月12日 著者:小林 泰三



ヴァンパイヤー戦争〈1〉吸血神ヴァーオゥの復活 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈1〉吸血神ヴァーオゥの復活 (講談社文庫)

正統派の伝奇小説って感じでしょうか(再発時の表紙絵は、明らかな狙いが見てとれますね)。バイオレンスアクションがふんだんに盛り込まれてて面白いけど、強い敵を倒して、「イイ女」とヤるってところにカッコヨサを見出すマッチョさが笑える。「オレは一匹狼さ」とか自分から言わないだろフツー(笑)。最後はオカルト、SF な要素が炸裂しつつ、次巻へ。引きは良いと思います。一応続きも読む。

読了日:02月16日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争〈2〉月のマジックミラー (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈2〉月のマジックミラー (講談社文庫)

2巻にしていきなり話が飛んだ。主人公がやたらとやられるようになって、爽快感は減退。日本オカルト古代史全開な方向性は好きですが、笠井先生が自身の「趣味」と公言するハードポルノ路線の描写は少々キツくなってきました。それにしても、娼婦と聖母に惹かれる典型的なオトコノコ像はブンガク的でありますな(笑)。あと、笹川吉晴の解説が脱線しまくりで面白いです。全巻の解説使って、伝奇小説を軸に日本のエンタメ史を俯瞰せんとす、みたいな勢い。本が一冊出来るぞ。

読了日:02月17日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争(3) 妖僧スペシネフの陰謀 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争(3) 妖僧スペシネフの陰謀 (講談社文庫)

冬山の闘い。オカルト的な設定は、これで一通り吐き出されたのかな。いわゆる「つなぎ」に近い巻だと思います。そのせいか、これまでよりもだいぶ読みやすくなったのは皮肉な話ですが、普通に面白く読めました。解説の笹川吉晴は吸血鬼史。圧倒的な調査量で怒濤の理論を展開。正直、本編より面白くなってきました。

読了日:02月18日 著者:笠井 潔



アホの壁 (新潮新書)アホの壁 (新潮新書)

様々な「アホ」分析など。フロイトと脳に拠った分析が続きますが、分かりやすいけどあっさりしすぎてて物足りなかった。言い間違いのくだりとか、焦点的自殺とか、もっとくどいくらい書き込んで欲しかったです。あっさりと幕を引いてしまったところも含めて、ちょっと御大らしくないと思います。終章の「アホ」連発は、文章的にミニマル感があって笑えたけど。

読了日:02月19日 著者:筒井 康隆



バカの壁 (新潮新書)バカの壁 (新潮新書)

「アホの壁」ついでに読んでみました。至極真っ当な内容の訓話みたいなのを、いきなり方程式とか持ち出して困惑させた後で、分かりやすく説明して差し上げるという、値切り交渉みたいな内容だと思いました。脳関係ないような気が…。

読了日:02月20日 著者:養老 孟司



明治大正見聞史 (中公文庫)明治大正見聞史 (中公文庫)

タイトル通りの回想録。帝都東京が市民目線で語られているので興味深く読めた(筆者は新聞記者であるから決して「庶民」ではないが、それが彼を「傍観者」たらしめているため)。大震災直後の章が一番面白い。町全体に漂う目に見えない不穏な空気がよく出ていて大変良かった。内容はここで終わっているが、復興後の話も読みたかったと思う。

読了日:02月22日 著者:生方 敏郎



ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

テーマは教育、年金、社会保障、医療、刑務所。いずれも巨大な市場に支配され、人々が容赦なく落とされていくことに恐怖を覚える(前作よりも対岸の火事では済まされない感がある分、余計に)。最後にフランクリン・ルーズベルトの小話を持ち出しつつ、「リーダーを誘導せよ」と訴えている点は、真の民主主義を実現せよ、という叫びにも聞こえた。

読了日:02月23日 著者:堤 未果



ヴァンパイヤー戦争〈4〉魔獣ドゥゴンの跳梁 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈4〉魔獣ドゥゴンの跳梁 (講談社文庫)

日本の次はロシアかな。鬼、ゾンビ・コマンド、怪僧スペシネフ、魔獣ドゥゴンと、だんだんとっ散らかって参りました。そしてまたしても九鬼の前から消える「黄金の女」(笑)。これ上手くまとまるんだろうか。笹川吉晴の解説は、ゾンビや日本におけるクトゥルフ神話の展開に言及しつつ、更に吸血鬼を掘り下げる内容。毎度毎度クオリティ高いです(解説は)。

読了日:02月24日 著者:笠井 潔,武内 崇



仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本

かなり個性的なプロマネ本。最終章になってやっと「スケジュール」という言葉が出てくることに代表されるように、ゲーム制作が元とはいえ一風変わっています。プロジェクトを「冒険」に見立て、ドット絵を取り入れたトータルデザインもいい感じ。もちろん一般的なプロジェクトにも応用は効くけど、個人的には、巨大化+組織化したプロジェクトで、どこまで上手く「冒険」を進めていけるか、というところは悩ましい。人数的にドラクエ4くらいが限界ではなかろうかという気もするが…。

読了日:02月25日 著者:米光 一成



ヴァンパイヤー戦争〈5〉謀略の礼部クーデタ (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈5〉謀略の礼部クーデタ (講談社文庫)

第一部完、て感じで面白かったです。お話を全力で転がしにかかった結果、エグさが少し弱まって読みやすくなった感じ。それでもドゥゴンはすごかったけど。この描写ってまんまクトゥルフじゃないか。名前はダゴンですが。日本史も知らない主人公が、なぜペリシテ人が信奉していた神を知っていたのかは謎。あと、毎巻ごとに主人公とまぐわう女性が次々と出てきては去っていく様はまさにエロゲーですね。

読了日:02月26日 著者:笠井 潔,武内 崇



読書メーター



以下雑感。
引き続き2月も積読解消月間。新刊は新書2冊(アホとアフリカ)だけですね。しかし、新刊買うのをやめても古本での補完が増える一方です。初めて読んだ小林泰三が面白かったので、他の作品も読んでみたい。
1月の反省から読むスピードを意識するようにしたので、全体的な読書量は増えました。ゆっくり読んでもどうせ細かく覚えてるわけではないし、読み飛ばしたっていいやと、開き直ったのが良かったのかもしれません。「帝都物語」や「ヴァンパイヤー戦争」など、あまり脳を使わない本から始めてますが(特に笠井先生は文章が硬くて読みづらいとよく言われるけど、だからこそ逆に読み飛ばしやすいです)、果たして他の本でどこまでいけるか。