ライブテープ @ 京島・橘館

「ライブテープ」を観てきました。
監督:松江哲明。主演:前野健太
74分ワンカットで、前野健太がギターを弾き語りしながら、吉祥寺の街を練り歩く映画。
http://www.spopro.net/livetape/
会場は、商店街の中にある小さな建物で、30人も入れない大きさ。昔の店舗を改装したのでしょうか、シャッター閉めてそこに幕を垂らし、プロジェクターで上映という形式で、それ自体がとても面白かった。上映中、雨がシャッターを叩く音とか、外を歩く人の話し声が聞こえてきたりして、映画の雰囲気というか、コンセプトとよく合っていたと思う。
映画の内容は前述の通りなのですが、音に色々な質感があって、特に面白かったです。ちょっとバランスが悪かったのか、聴き取りづらいところがあって、主催者さんが終了後に謝っていましたが、あれ自体演出って感じなのではと受け取っていたし、全く理解できないわけでも無かったのでいいのではないでしょうか。唄のところは、エフェクトが逆に分かりやすくなってて、面白かったようにも思います。
松江監督が、前野さんを良い意味でダサくしていく過程がとても良かった。唄が上手すぎたりするのは、彼の功罪という気もするけど、そこを超えて、素の部分を出していくというか、内面の熱さを引き出していく過程にはゾクゾクした。
放映後、近所の公園(!)にて、トークショーとライブ。商店街を歩いて公園に向かい、最後にライブという、まさに「リアルライブテープ状態」。
トークショーでは、松江監督のドキュメンタリーに対する分かりやすい解説、すなわち、「ドキュメンタリーには演出が必要である。それは、出演者の素の表情であるとか、録り手の意図を超える出演者の反応を引き出すため」という感じのコメントが再確認出来て良かったです。自分が最近「水曜どうでしょう」ばかり観ているのも、こういうことが好きだからなのかなと、ふと思いました。
前野さんのライブも良かったです。やはり声がとても良いので、普通のライブはかなり聴かせますね。環境的には大変そうでしたが、「辛い環境だからこそ出てくる唄がある」という感じで、いささか感動を覚えました。それにしても、松江監督は「自分は晴れ男だから絶対晴れます」と言っていたのに、やっぱり止まなくて、それどころか、クライマックスの「天気予報」では大雨になってて、前野さん、どんだけ雨男だよ、と思いました。ちょうどパトカーが通りかかったりとか、奇跡のような場面。アンコールにすべり台に上って、終わったらそのまま滑り降りるやんちゃさにも興奮しました。
というわけで、良かったです。それにしても、墨田区京島から見える東京スカイツリーは衝撃でした。靄の中、塔だけが突出してそびえ立っていて、こちらを見下ろしているような感覚に襲われる。サイバーパンク的な近未来みたいだな…。