[Book] 読書メーター2010年3月分まとめ

先月分のまとめです。
3月の読書メーター

読んだ本の数:22冊

読んだページ数:6191ページ



ヴァンパイヤー戦争〈6〉秘境アフリカの女王 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈6〉秘境アフリカの女王 (講談社文庫)

舞台はパリへ。そしてこの巻はサブタイトル通り、アフリカへの道筋が示される導入部でした。隠れ人気キャラ(たぶん)のムラキさんにスポットが当たっておりますよ。バイオレンスアクションというより、冒険物語みたいな趣に少し変わりました。恒例の解説も、少し毛色が変わって、ハリウッド映画や日本の冒険小説における「敵」の描き方の分析などでした。

読了日:03月02日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争〈7〉蛮族トゥトゥインガの逆襲 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈7〉蛮族トゥトゥインガの逆襲 (講談社文庫)

アフリカそして密林へと進みます。解説でも言及されてますが、一連のアフリカモノには底本があるらしく、話の流れはそれに沿っているようですね。そのせいか、これまでとはだいぶ毛色の違う、冒険譚のような仕上がりです。読みやすいけど、あまり笠井先生のどギツい作家性が発揮されていないのが残念ではある。今回の解説は、前述したように底本との比較が主。作品そのものにここまで言及されたのって、初めてではないだろうか。

読了日:03月03日 著者:笠井 潔,武内 崇



地球を斬る (角川文庫)地球を斬る (角川文庫)

国際政治コラム集。検証や解説も付いていて、基本的に読み応えはある。短い文章の中に、深い洞察が凝縮されていると思う。とはいえ、自分に馴染みの薄い、宗教的考察と情報官僚の経験に基づいた視点は、魅力的である一方、煙に巻かれているようでもある。物言いが硬派で客観的分析をしている印象を受けるが、実は鵜呑みにしてはいけないのではないか、という漠とした危機感が頭をよぎる。

読了日:03月04日 著者:佐藤 優



リヴァイアサン―終末を過ぎた獣 (講談社ノベルス)リヴァイアサン―終末を過ぎた獣 (講談社ノベルス)

大塚節炸裂。小説の「作法」をまず構築して、そのまな板の上で小説を「実践」する。今作はさしずめ「セカイ系」の実践講座でしょうか(最終話とか特にそんな感じなので)。絵柄については、マンガ版は衣谷遊でしたが、小説版は箸井地図に依頼したところも、彼のそうした「狙い」を感じる。それにしても、「犬彦」や「終わらない昭和」という、摩陀羅神話へのお決まりのリンクに相変わらずはしゃいでしまう私は、全く成長してないな(苦笑)。

読了日:03月04日 著者:大塚 英志



新日本探偵社報告書控 (集英社文庫)新日本探偵社報告書控 (集英社文庫)

読んでる途中で再読と気づいた罠。興信所を舞台に、その所員と調査報告書について淡々と記録していくだけの作品。心理描写がほとんどなく、筒井御大らしからぬ抑えっぷりですが、逆に文章の端々に、ピンと張り詰めた緊張感がある。報告書だけで事の顛末が語られるところとか、行方知れずになったり死んだりした所員に対して、周囲の心理が全く描かれないところも良い。読み手が行間を膨らませて楽しむ作品であると思います。

読了日:03月05日 著者:筒井 康隆



新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)

なぜかビジネス書界隈で取り上げられていた本。ゲリラは地域住民の支持を得よというのは、ドラッカー的な企業による社会への貢献と通じると言えなくもないか。ビジ書として読まれる意義は感じませんが、組織論としては規律と平等を重んじるという定番だが難しいことを説いており、また、ゲリラ戦術自体も読み応えがあるなど、面白かった。

読了日:03月07日 著者:チェ・ゲバラ



ヴァンパイヤー戦争〈8〉ブドゥールの黒人王国 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈8〉ブドゥールの黒人王国 (講談社文庫)

前半は大冒険アドベンチャー。これまでとだいぶ毛色が違うけど、これはこれで面白かった。一方、王国にたどり着いてからの展開はほとんど印象に残ってない。個々のキャラ立てが不十分ですし、アクション要素も足りず、いささか物足りなかったです。作者が自分の好みに心地よく浸っているにすぎないからではないか(これまでは自分の好みを「破壊」していた)、と、解説に触発された結果、思う。

読了日:03月09日 著者:笠井 潔,武内 崇



脳ミソを哲学する (講談社プラスアルファ文庫)脳ミソを哲学する (講談社プラスアルファ文庫)

筒井御大と様々な分野の専門家による対談集。幅広いですが、それぞれの分野についてはボリューム不足です。御大の受け答えも「ほぉ、そうですか」で終わってたりして、話が発展していない。もちろん知らないことも多かったので、あくまでも一般教養本て感じかな…。元が1995年だから、ヒトゲノムなど古い話があるのは仕方ない。個人的には、佐藤文隆の先端科学に関する話が興味深かったです。

読了日:03月10日 著者:筒井 康隆



ヴァンパイヤー戦争〈9〉ルビヤンカ監獄大襲撃 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈9〉ルビヤンカ監獄大襲撃 (講談社文庫)

舞台はアフリカからヨーロッパ、そしてモスクワへ。アフリカ編が何か中途半端な気がするのは、底本の部分が前巻で終わっていて、後から付け足したようになってしまっているからでしょうか。正直この部分、要らなかった気がする。後半もイマイチ脂が乗りきってない、歯切れの悪い文章で、あまり楽しめなかった。アフリカ編後のリハビリ期間て感じ。

読了日:03月11日 著者:笠井 潔,武内 崇



音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

音楽を語る批評言語として、「身体性の共振」を挙げているのが、とりわけ興味深い。ただ、実際にどういった言葉が有効なのかというのはよく分からないままだけど。また、自分の文脈を意識しながら、そこから外れたものを排除せずに聴く、という姿勢も正しいと思う(なかなか出来ないことですが…)。恐れずしかし奢らず、音楽について「語る」べし。他にも色々と示唆に富んでて面白かった。

読了日:03月13日 著者:岡田 暁生



ヴァンパイヤー戦争〈10〉魔神ネヴセシブの覚醒 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈10〉魔神ネヴセシブの覚醒 (講談社文庫)

ロシアで主人公が閉じ込められてたら、陰謀が張り巡らされてどんでん返しが起きる、という話の流れです。一人称ということもあり、読み手の側も、蚊帳の外でガヤガヤ動いていつの間にか急展開、という感じでポカーンとなってました。最終巻に向けて収拾に走っている感じで、大破壊が起きてもいまひとつ緊張感がないですね…。解説はついにクトゥルフ神話が来ました。こちらもクライマックスです。

読了日:03月15日 著者:笠井 潔,武内 崇



ヴァンパイヤー戦争〈11〉地球霊ガイ・ムーの聖婚 (講談社文庫)ヴァンパイヤー戦争〈11〉地球霊ガイ・ムーの聖婚 (講談社文庫)

完結。最後は月面に行って宇宙戦争まで始めちゃったよ! いきなり舞台が変わったので、正直面食らいました。しかし、どんなにスケールが大きくなったとしても、この本の根底は変わらない。つまり「女の官能的な肉体こそおれをほんとうの世界に導くはずだ。そこで自分は、ほんとうの自分にめぐりあうことができる…」。解説も含めて、大作でありました。お疲れさまでした自分。

読了日:03月16日 著者:笠井 潔,武内 崇



鮮血のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険1> (講談社文庫)鮮血のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険1> (講談社文庫)

外伝ということで、九鬼の若き日の冒険です。でも基本的なバイオレンスアクション路線は正伝と同じですし、若さ故の性格ってところも、もともと猪突猛進型だからあまり違いが無いような。色欲を知らないってところくらいでしょうか(まあそこが大きいのかもしれませんが)。ウスペンスキーが出てきたりと、外伝ならではの楽しみ方は一応あります。

読了日:03月17日 著者:笠井 潔



ゼロ年代の音楽---壊れた十年ゼロ年代の音楽---壊れた十年

ゼロ年代統括、みたいなのは無し。細分化された音楽が個別に語られる形式。最初の鼎談は未整理感が強くてイライラした。個人に則した自分語りとしても、磯部氏や二木氏は、日本のヒップホップについて一応筋道を付けているというのに。「壊れた十年」がエクスキューズに聴こえる。150枚のディスクガイドは逆に、セレクトや内容も含めて個性的で面白くはあったのですが。

読了日:03月20日 著者:野田 努,三田 格,松村 正人,磯部 涼,二木 信



疾風のヴァンパイヤー 九鬼鴻三郎の冒険(2) (講談社文庫)疾風のヴァンパイヤー 九鬼鴻三郎の冒険(2) (講談社文庫)

秘密工作員になった九鬼が日本で活躍するなど。この疾風と、次巻の雷鳴で上下巻て感じです。正伝読み通したので、ほとんどお付き合い気分で読んでいます。ソツの無い出来とは思いますが、ヴァンパイヤー出てこない時点で別に伝奇モノでもなく、九鬼は既に完成された人格であり、これまでと何ら変わらないので、何のためにこの本があるのか、よく分からなくなってきました。

読了日:03月21日 著者:笠井 潔



ゲームラボ 2010年 04月号 [雑誌]ゲームラボ 2010年 04月号 [雑誌]

クトゥルー神話特集目当て。いわゆる「クトゲー」だけでなく、さりげなく紛れ込まれているゲームも取り上げていて、単純に調査量がすごいなと。そこまで広げると、Wiz も FF もみんな入ってきちゃうわけですけど、それだけクトゥルー神話群が、皆の無意識に這い寄っているということか。エターナルダークネスやりたい。

読了日:03月21日 著者:



雷鳴のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険3> (講談社文庫)雷鳴のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険3> (講談社文庫)

完結。香港からベトナムへ。九鬼はベトナム帰りの傭兵になりすましたりします。途中の軍人さんがやたら喋るのを読みつつ、笠井先生がベトナム戦争の話がしたかっただけなのでは…と思いました。あとようやく「愛情でも恋情でもない、湧きたつように強烈な欲望」に目覚めましたね。待ってました(笑)。前巻から仕込まれた伏線の回収は良かったです。

読了日:03月21日 著者:笠井 潔



新版 サイキック戦争I 紅蓮の海 (講談社文庫)新版 サイキック戦争I 紅蓮の海 (講談社文庫)

ヴァンパイヤーの次はサイキック。「コムレ・サーガ」を根底に敷いた、同一の神話群です。主人公が「連合革命軍」の裏切り者とは、笠井先生らしいテーマ設定だなと思う。他にも色々とダメな主人公ですが、それが自虐的ナルシシズムを感じさせますね。ベトナム戦争と絡めたストーリーは、思いのほか陳腐でいささかしょんぼり。サイキックアクションが全然炸裂しないのも何だかなーという感じです。最後だけ少し盛り上がったけど。というわけで、あまり期待せずに次巻へ。

読了日:03月23日 著者:笠井 潔



新編 風雲ジャズ帖 (平凡社ライブラリー)新編 風雲ジャズ帖 (平凡社ライブラリー)

ブルーノート研究と、日記と、ジャズピアノ講義を収録。研究は一見理論的なのですが、突き詰めずに感性で突っ走るところもあって、勿体無いと思いつつも、それこそが音楽であるからして、良い意味でやっぱりアーティストだなという感じ。日記部分は本当にハチャメチャですね。なぜそんなにピアノを壊す。楽しく無邪気なハチャメチャさは、今の時代では出せない空気かなとも感じる。

読了日:03月25日 著者:山下 洋輔



新版 サイキック戦争II 虐殺の森 (講談社文庫)新版 サイキック戦争II 虐殺の森 (講談社文庫)

完結。最後にようやくサイキック対決になる。ずいぶん駆け足になりましたね。ストーリーは正直楽しめなかったけど、倫理観も成長も棄てて初めて、真の力に目覚めるってのは面白いなと思いました。結局そのきっかけが「官能的な唇」だったのには、ああやっぱりねと笑えた。あと、前島賢の解説は、笠井先生の小説をセカイ系の起源に求める偽史的な試みで面白かったです。

読了日:03月26日 著者:笠井 潔



帝都物語〈12 大東亜篇〉 (角川文庫)帝都物語〈12 大東亜篇〉 (角川文庫)

昭和二十年夏、ソ連侵攻直前の旧満州の帝都・新京が舞台。映画で本物の「鬼」を撮ろうとする甘粕の狂気とか、面白かったです。最後に大破壊でみんな死んじゃった、みたいな話の適当っぷりも潔し。あと、死者の魂が戻らずに身体だけ蘇ってしまったという「虚亡子」のくだりが一番興奮した。キョンシー

読了日:03月29日 著者:荒俣 宏



われら猫の子 (講談社文庫)われら猫の子 (講談社文庫)

短篇集。現実の中にドロリと顔を出す幻想性を、子ども(産む産まれる親になる)を軸に展開させていく話が多く、どれも作者にしてはあっさり目という気もしますが、総じて面白かったです。熱情が迸り、むせ返るような熱さを持った濃密な文章は、最後の「エア」でばっちり堪能できましたしね。寒いのに汗かいてしまった。

読了日:03月30日 著者:星野 智幸



読書メーター



以下雑感。
ヴァンパイヤー戦争、外伝も含めて一通り読み終わりました。積読消化のつもりで読み進めたのですが、途中から残りの巻を買い揃えたりしてしまったので、効果は全くなし…。最初は普通に伝奇モノとして楽しんでましたが、途中から舞台や作風が変化していくにつれ、唖然とするやら笑えるやらというのが多く、これはこれで楽しめました。
シリーズものを一気に読むというのは、間に挟まれる別の読書も含めて、習慣づけとして良いと思ったので、今後も続けたいです。何気に帝都物語も全部読んだことになるのかこれで。次は銀英伝アルスラーンに手を出すか、積読中の北方水滸伝に行くか、色々と迷い中です。
音楽系の書籍は(「音楽の聴き方」や「ゼロ年代の音楽」など)、読書メーターのコメントだけでは書ききれないメモ量になっているので、別の機会・場所で整理したいと思います。